研究概要 |
シクロペンタジエニル基を有するルテニウム(II)錯体は、2価から4価への酸化的付加や還元的脱離が容易に進行することが知られており、結合の切断反応や形成反応に高い活性が期待されている。これまでに我々のグループでは、三級ホスフィン配位子を持つルテニウム(II)錯体において、カルコゲン原子をアンカーとした各種アリーロキソ配位子を合成し、オルト位にある通常は結合切断が困難なsp^3炭素-水素結合などが容易に切断できることを見い出している。そこでシクロペンタジエニル配位子を持つルテニウム(II)錯体にカルコゲン原子をアンカーとするアリーロキソまたはチオラトルテニウム(II)錯体を新規に合成するとともに、その反応性を解明することを目的とした。RuCpCl(PPh_3)_2とKOPh, KOC_10_H_7,KOC_6H_4Me_2-2,4とのメタセシス反応では、対応するアリーロキソルテニウム錯体RuCpCl(OAr)(PPh_3)_2が生成した[Ar=Ph:72%,C_<10>H_7:80%,C_6H_3Me_2-2,4:73%]。 カリウム2-アリルフェノキシドを用いた時には、PPh_3の解離とともに2-アリルフェノキソ配位子のC=C結合がルテニウムに配位したアリールオキソ錯体が生成した.一方、RuCpCl(PPh_3)_2とカリウム2,6-ジメチルフェノキシドとの反応では、対応するアリーロキソ錯体は得られずに、ヒドリドルテニウム錯体RuCpH(PPh_3)_2が収率31%で生成した.今後、この反応における詳細な検討が必要であるが、(1)我々は2,6-ジメチルフェノキソルテニウム錯体Ru(OC_6H_4Me_2-2,6)(C_3H_5)(PMe_3)_3からのメチル基の炭素-水素結合切断反応により、メタラサイクル錯体の生成を報告していること、および(2)Bruce(オーストラリア)らの研究では、RuCpCl(PPh_3)_2とβ位に水素を持つアルコキシドとの反応により、アルコキソルテニウム中間体を経由した後にβ水素脱離したと考えられるRuCpH(PPh_3)_2の生成が報告されていることなどから、RuCp(OC_6H_4Me_2-2,6)(PPh_3)_2中間体を経由してメチル基の炭素-水素結合の切断反応が進行し、RuCpH(pph_3)_2が生成したと考えられる。これらの置換はアルコール類の直接官能基化に関連した結合活性化反応であると考えられる.
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