本年度はシクロブタノンの2位にo-スチリル基を導入した基質を用いてロジウム触媒による反応を行い、ロジウムへの酸化的付加により5員環ロジウムメタラサイクルを発生させ、その分子内オレフィンに対する反応性について検討した。また、ロジウム触媒によるシクロブタノンとアリールボロン醸の反応を行い、アリールロジウム種によるシクロブタノンの付加-開環反応についても検討した。 2-(o-スチリル)シクロブタノンをロジウム(I)-トリアリールホスフィン触媒存在下140℃で加熱したところ5員環ロジウムメタラサイクルのロジウム-アシル結合間へのビニル基の挿入の後に、β-水素脱離が進行して8員環ケトンを2種の異性体混合物として与えた。一般的に合成が困難とされる中員環化合物を1工程構築できる本反応は合成化学的に意義深い。この反応はロジウムの配位子として少なくとも1つのo-メトキシフェニル基を有するトリアリー-ルホスフィンを用いた場合にのみ進行した。 3-フェニルシクロブタノンとフェニルボロン酸をロジウムI)-トリアルキルホスフィン触媒存在下100℃で加熱したところアリールロジウム中間体のシクロブタノンのカルボニル結合への付加の後に、β-炭素脱離が進行してブチロフェノン誘導体を与えた。この反応はロジウムの配位子としてトリ-tert-ブチルホスフィン、塩基として炭酸セシウムを用いた場合に最も効率的に進行した。アリールロジウムのカルボニル結合への付加、続くロジウム(I)アルコレート中間体からのβ-炭素脱離によって生成するアルキルロジウム(I)中間体が、β-水素脱離-再付加を2回繰り返し最終的にロジウム(I)エノレート中間体になった後に、カルボニルのα位がプロトン化されることが重水素化実験により明らかになった。
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