研究概要 |
ビニリデン金属錯体は、1-アルキン(末端アルキン)類と種々の遷移金属錯体とから容易に発生するこが知られており、近年ビニリデン金属錯体を鍵中間体とする触媒反応がさかんに研究されている。本研究者も以前に、ルテニウム触媒存在下、1-アルキン類とヒドラジンとの反応によりニトリルが生成することを見出し、すでに報告している(Organometallics 2002,21,3845)。この反応は求核剤としてアミンを用いた初めての例である。さらに種々のアミン類を用いた反応を検討したところ、1-アルキンとアリルアミンとの反応をロジウム触媒存在下で行うと、新しい型の環化反応が進行することがわかった。すなわち、2分子の1-アルキンの末端炭素と1分子のアリルアミンとから含窒素五員環化合物が得られた。本反応ではホスフィンを有する種々のロジウム錯体を用いることが可能であるが、いずれも収率は中程度であった。しかし種々のアンモニウム塩を添加することに収率が大幅に向上することわかった。なお他の錯体では全く触媒活性がなかった。さらに基質の適用範囲を確認したところ、シロキシ基、アセタール基、シアノ基、エステル基、アミド基、エーテル基、芳香族環等、種々の官能基を持つアルキンでも収率よく反応が進行した。いずれの生成物にも炭素-炭素二重結合が一つ存在するが、興味深いことにすべての生成物において立体化学は1種類(E-体)であった。生成物の基本骨格である3-アルキリデン-1-ピロリンの効率的な合成法はこれまでなく、この骨格を有する天然物Lanopylin類の実用的合成に貢献できるものと考えられる。
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