イリジウム錯体を触媒に用いることで、アミン、アルデヒドおよびトリメチルシリルアセチレンのような末端アルキンの新規な1:2:2カップリング反応が起こることを見出した。例えば、[Ir(cod)Cl]_2錯体触媒存在下、n-ブチルアミン、n-ブチルアルデヒドおよびトリメチルシリルアセチレンの反応をTHF中70℃で行うと、対応する1:2:2カップリング生成物が70%程度の収率で得られた。この反応は、反応系中で一旦イミンが生成し、さらにエナミンの生成を経て進行することが示唆された。そこで、種々のエナミンを別途に合成し、トリメチルシリルアセチレンとの反応を検討したところ、期待通り目的とするカップリング反応が生起することが明らかになった。 一方、同様のイリジウム錯体触媒を用い、少量の塩基存在下、ケトンとアルコールの反応を検討したところ、ケトンのα-アルキル化反応が良好に進行することが明らかとなった。ケトンのα-アルキル化反応は、炭素-炭素結合形成反応として有機合成上最も基本的な反応の一つである。例えば、2-オクタノンをモデル基質とし、触媒量の[Ir(cod)Cl]_2およびPPh_3存在下、あらかじめKOHを溶解させた1-ブタノールを加え100℃で4時間反応させたところ、6-ドデカノンが良好な収率で得られた。本反応は、2-オクタノンの1位の炭素へ位置選択的にα-アルキル化が起こることが明らかになった。また、ケトンとアルコールをほぼ1:1の割合で用いて反応を行うことができ、無溶媒条件のもと効率良く反応が進行することから、本反応は原子効率の高い反応となる。同様に、アセトフェノンと1-ブタノールの反応によりフェニルペンチルケトンが生成することがわかった。
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