研究概要 |
本研究では、1,2:5,6-ジアンヒドロ-D-マンニトール(1)の水素移動反応を伴う環化重合によって、新規な多分岐糖鎖(2)の合成を行なった。モノマー1のアニオン重合は開始剤としてtert-ブトキシカリウムを用い、テトラヒドロフラン中、23℃にて行った。カチオン重合は開始剤として三フッ化ホウ素エーテル錯体を用い、ジクロロメタン中、0℃および23℃にて行った。生成糖鎖は透析膜を用いて精製した。精製後、生成糖鎖の分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、静的光散乱(SLS)によって求めた。構造については、NMRによって決定し、分岐度を算出した。カチオン重合の場合はゲル化する事なく進行し、生成糖鎖はテトラヒドロフランおよびジクロロメタンに不溶性、メタノール、水に可溶性の白色固体であった。一方、アニオン重合の場合、生成糖鎖のほとんどは不溶性のゲルであった。SECによって見積もられた生成糖鎖の重量平均分子量(Mw, SEC)は1100-3600であったのに対し、SLSによって求められた重量平均分子量(Mw,SLS)は2.08x10^5-2.69x10^6であった。いずれにおいてもMw,SECはMw,SLSよりも小さく見積もられ、生成糖鎖が球状に近い形を有している事が示唆された。さらに粘度測定により、Mark-Howink定数(α)の値を求めたところ、αは0.29であった。以上の結果より、生成糖鎖はハイパーブランチ糖鎖であることが示された。生成糖鎖の^13C NMRスペクトルには2,5-アンヒドロ-D-グルシトール(3)ユニット由来のピークおよび、ポリマー末端に由来するピークが見られる。NMRによる生成糖鎖の構造解析の結果より、Freyの式を用いて分岐度を算出したところ、0.44-0.46であった。 以上より、1,2:5,6-ジアンヒドロ-D-マンニトール(1)の環化重合は水素移動反応を伴いながら進行し、2,5-アンヒドロ-D-グルシトール(3)ユニットからなる新規なハイパーブランチ糖鎖(2)を生成した。
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