1.有機超薄膜による変形可能基板表面の修飾 有機超薄膜で修飾後に延伸変形可能な基板として、シリコンラバーおよび圧電体基板を使用した。それぞれの基板を洗浄後、有機超薄膜による修飾を容易にするために金を蒸着した。この表面をラングミュア・ブロジェット(LB)法により、フッ化炭素鎖を有する両親媒性化合物の有機超薄膜で修飾した。垂直浸漬法で累積した際の累積比は、今回使用したLB膜についてはどれもほぼ1であり、良好に表面修飾が可能であった。 2.基板変形に伴う接触角の変調 低分子化合物のLB膜で修飾した場合には、液体の滴下によって膜が剥離した。これに対して、高分子化合物のLB膜は液滴との接触にも耐えることができた。このことから、含フッ素高分子のLB膜が液体輸送用の修飾膜として使用できる可能性がある。高分子LB膜で被覆修飾したシリコンラバーを延伸しながら、その上に滴下した液体の接触角を測定した。延伸率が低いときには、修飾超薄膜が存在するときにより大きな接触角変化が認められ、LB膜修飾の効果が現れた。特に延伸率が低いときにLB膜修飾の効果が顕著であったため、変形量の少ない圧電体基板を用いた場合にも活用できると考えている。表面張力の異なる液体について、同様の実験を行った結果、表面張力が47mN/mのエチレングリコールの液滴では、延伸により接触角が90゜をまたいで変化した。このことは、液滴の前後で非対称な変形を行えば液体輸送へと展開可能であることを示している。 3.累積装置の改良 電極等を接続した圧電結晶上にLB膜を作製するためには、下層水に直接基板を接触させないように水平付着法で行うことが望ましい。そこで、新規に購入したLB膜作製装置の基板保持部分を改良し、水平付着法による累積ができるように改良した。
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