研究概要 |
ラジカル重合の停止反応は拡散律則であるため、その速度定数k_tは、重合率(粘度)とともに、成長ラジカルの鎖長に敏感であり、k_tの鎖長依存性を明らかにすることは重要である。本研究では、特定の鎖長の停止速度定数k_tを決定しうる、リビングラジカル重合を用いた新しいk_t決定法を3種提案し、k_tの鎖長依存性を明らかにすることを目的とした。本年度は、3種の決定法、(1)定常重合速度法・(2)非定常重合速度法・(3)再結合停止の直接観察法をスチレン系に適用した。その結果、例えば、重合度DP=20のポリスチレン(3wt%,110℃)のk_tは、手法1と2により3.6x10^8M^<-1>s^<-1>と同じ値が得られ、手法3では4.0x10^8M^<-1>s^<-1>が得られた。他の重合度(8から100)とポリスチレン濃度(1から5wt%)においても、3つの手法からほぼ同じ値が得られた。従来、k_tの実測値は測定精度の限界により数十%の誤差を含むのが通常であったことに鑑みると、この一致は驚くべき結果である。個々の実験法の正確さと各実験間の整合性が示唆され、3つの手法をk_t決定法として確立することができた。希薄領域(低ポリスチレン濃度)において、k_tは、DPの増加とともに、k_t〜DP^<-0.5>(DP【less than or equal】10)、k_t〜DP^<-1.0>(10【less than or equal】DP【less than or equal】30)、k_t〜DP^<-0.16>(30【less than or equal】DP)となり、k_tの鎖長依存性を明らかにすることができた。これらの3領域は、理論との比較により、それぞれ、重心の拡散に支配される領域、中間領域、セグメントの拡散に支配される領域と考えられる。
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