研究概要 |
モノマー単位中にフッ素原子を3個、5個、7個持つビニルエーテル系ポリマー(polyTFEOVE,polyPFPOVE,polyHFBOVE)が疎水性セグメントで、ヒドロキシエチルビニルエーテルのポリマー(polyHOVE)が親水性セグメントとなった水溶性の含フッ素両親媒性ブロックコポリマーをリビングカチオン重合法とそれに続く官能基変換により、各セグメント長をそろえて(疎水性セグメントの重合度が約20、親水性セグメントの重合度が約80)精密合成し、その性質を詳細に検討した。その結果、以下の新しい性質を見い出した。 表面張力測定により、含フッ素ブロックコポリマーが水面上で高い界面活性を示し、フッ素原子数が多くなるにつれてその界面活性が高くなり、polyHOVE-b-polyHFBOVEに至っては、水溶液の表面張力を28mN/mまでに低下させることが明らかになった。また、X線小角散乱および中性子小角散乱測定により、これらのブロックコポリマーが水中で多分子会合し、フッ素セグメントをコア、親水性セグメントをシェルとしたコア-シェルミセル状の粒子を形成することが明かとなった。このミセル粒子は、球状-棒状の共存状態で、コア断面の半径は、5nm程度、シェルの断面の半径は10nm程度であると見積もられた.また、フッ素原子数が増えるにつれて、ミセルの断面の大きさは変化しないが棒状ミセルの割合が増加することがわかった。さらに、紫外-可視吸光分析により、このミセルがフッ素系の疎水性化合物を選択的に可溶化する「親フッ素性」を示し、その性質がフッ素原子数が増加するにつれて顕著になることが明かとなった。 これらの実験結果は、高分子界面科学の発展に寄与するとともに、工業的応用性、実用性が極めて高く意義深いものである。
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