研究概要 |
これまで、チイラン類とカルボン酸誘導体類との位置選択的付加反応を利用した、分子量と分子量分布の制御されたポリスルフィドの合成法を確立している。本研究では、大環状S-アリールチオエステルを開始剤に用いたチイラン類の重合について検討した。種々の骨格を有する環状S-アリールチオエステル類(o-CTE-2)を合成し、これを開始剤に用いた環拡大重合による、環状ポリスルフィドの合成について詳細に検討を行った。o-CTE-2とチイラン類[3-フェノキシプロピレンスルフィド(PPS),3-ブトキシプロピレンスルフィド(BPS),シクロヘキセンスルフィド(CHS)]とのチオエステル結合への付抑反応を触媒としてテトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)を用い、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中、90℃、24時間行った。その結果、IR、^1H NMRよりS-アリールチオエステル結合にチイラン類が100%付加したことが分かったが、より小さい環状生成物と大きい環状生成物(1〜4量体)が確認された。GPC測定より、いずれのチイランを用いた場合も、高分子量生成物(数平均分子量(M_n)=約1方)が認められた。 次に、o-CTE-2とPPSの反応を、TBAC存在下、NMP中、90℃、24時間、種々の仕込み比で検討した結果、高収率でポリマーが得られ、PPS/o-CTE-2の仕込み比の増加に伴い、得られたポリマーのM_nが増加した。また、^1H NMRより算出したM_nは、仕込み比より算出した理論分子量と良く一致したが、GPCから算出したM_nは大きな値であることが判明した。以上の結果より、o-CTE-2へチイラン類が挿入する際、環の拡大と共に、分子間反応による環の拡大反応が進行したと考えられる。
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