昨年度の研究によりN-アルキルアニリンの4位と安息香酸エステルの4位をビニレン基で結合させたスチルベン誘導体およびエチニレン基で結合させたジフェニルアセチレン誘導体は、塩基性条件下で縮合させるとポリアミドとともに環状オリゴアミドを与えることを明らかにした。そこで今年度は上記の環状化合物が有機ナノチューブ構成ユニットとして適した構造であるか調べるため、それらを逐次的に合成してX線解析により構造を明らかにすることを目的とした。まずスチルベン誘導体のモノマーユニットを合成し、それらをアミド結合でつなぐ方法を検討した。様々な反応条件を検討したところ、縮合剤としてトリフェニルホスファイトを用いることにより高収率でアミド結合を形成できることがわかった。この縮合法を用いて直鎖三量体を合成して塩基性条件下で環化を試みたところ、高収率で環化三量体を得ることができ、有機ナノチューブ構成ユニットである環状化合物の合成法を確立できた。現在、この環化物の単結晶化ならびにより大きな環状化合物の合成を行っている。一方、ジフェニルアセチレン誘導体の直鎖オリゴマーの合成は、モノマーユニットの合成は出来たもののアルキルアミノ基の求核反応性が非常に低く、アミド結合形成によるオリゴマー合成は困難であることがわかった。 さらに有機ナノチューブの他のモノマーユニットとして、ベンゼン環をイミデート結合でつないだ環状化合物も設計し、その合成を試みた。まずアミド結合をイミデートへと変換する方法を検討したところ、塩化チオニルと金属アルコキシを用い、生成物の分解を防ぐ工夫をしながら後処理ならびに精製をすることにより、ほぼ定量的に変換することができた。今後、我々がすでに確立した方法による4-アルキルアミノ安息香酸の環状六量体の合成、ならびに本研究で得られた手法によるイミデート化を検討する予定である。
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