昨年度は、セルロース、キチン等の多糖類、ポリスチレンなどの合成高分子、シリカ、ガラスなどの無機物、酵母等の微生物を試料として用い、超臨界水を含む高温・高圧水中での挙動を、高温・高圧光学顕微鏡を用いてその場観察し、以下の結果を得た。 1)320℃付近での、セルロースの結晶-不定形転移 2)390℃でのキチンの溶解 3)250℃付近での、酵母細胞の崩壊 3)250℃以上でのポリスチレンビーズの熱膨張と、臨界温度付近での急激な熱分解 4)300℃付近での、シリカ微粒子の速やかな溶解 5)臨界温度近辺での、ガラスビーズの膨潤 本年度は、代表的なエンジニアリングプラスティクスであり、高い耐熱性を有するポリアミドの超臨界水中での挙動を直接観察した。ポリアミドでさえ、超臨界水中、400℃、25MPaにおいて、速やかに加水分解されることがわかった。またこれらの研究成果を取りまとめ、積極的に学会発表を行った。 本研究で得られた結果は、高分子/超臨界水2成分系の相挙動に関する基礎的知見を与えると同時に、高分子材料の分解・リサイクルなどを目指した、超臨界水中での高分子材料の化学反応機構を考える上でも極めて重要である。科学研究全般において、視覚情報は、もっとも基本的な情報である。しかしながら、超臨界水のような、極限的な環境下での現象を対象とした場合には、視覚情報の取得そのものが困難であり、これまで視覚情報の有用性は十分には認識されてこなかった。本研究では、超臨界水中における材料物性の評価、反応条件のプロトタイピング等において、高温・高圧光学顕微鏡によるその場観察が、極めて有用な手段であることも示された。
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