水素結合による分子の自己集合・自己組織化を利用した材料では、ミクロな分子間相互作用によって形成される周期構造や階層構造、つまり集合・組織化構造が材料の多機能・高機能を発現させることが期待できる。本研究ではこの自己集合、自己組織化材料として物理グルに着目し、その機能(分子間相互作用)を制御する外的刺激として「光」を用いた。 まず、水素結合性のアミド部位とフォトクロミック分子であるアゾベンゼン部位の両方を分子内に有するシクロヘキサン型のキラルな光応答性低分子ゲル化剤を設計・合成した。このゲル化剤を異方的な機能性媒体であるネマチック液晶と複合化して光応答性ネマチック液晶ゲルを形成させ、光刺激による空間的な複合構造変化について検討した。その結果、アゾベンゼン部位のトランスーシス光異性化によってゲル化剤のキラリティーを反映したコレステリック液晶相(ゾル)が発現し、その後のシスートランス異性化でコレステリック構造を有するゲルが形成することが分かった。このコレステリック液晶ゲルは室温で安定であり、同じ組成で異なる複合構造を有するゲル状態を光で作り出すことに成功したことになる。これらのゲル状態は異なる光学的性質を有し、加熱プロセスを経由することで繰り返し変換可能であった。そこで、マイクロメートルレベルの光パターニングを行い、複合構造変化を利用した書き換え可能な光情報記録への応用の可能性を示した。また複合構造が変化する際に水素結合の解離・形成が関与していることを明らかにし、光により水素結合のオン/オフ・スイッチができることを示した。
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