研究概要 |
z-カットLiNbO_3強誘電体単結晶に高周波を印加することにより発生する厚み共鳴振動(TER O)が、その結晶表面に接合した金属薄膜の触媒活性や反応選択性を顕著に変化させる効果を持つことをこれまでに報告してきた。近年、レーザードップラー測定から、TER Oは金属触媒表面に動的格子変位の定在波分布を持つこと、光電子放出測定から金属表面の仕事関数増加をもたらすことを見出した。本研究では、レーザードップラー測定と光電子放出測定装置を組み合わせ、TER Oによる動的格子変位の定在波の分布と仕事関数分布の相関について調べた。レーザードップラー測定から、TER Oにより動的格子変位が小さいサイトと大きいサイトが混在した格子変位分布が得られた。動的格子変位は、最小のサイト(A点)では28nm,最大のサイト(B点)では61nmになった。光電子放出測定において、TER Oを与えない場合、金属表面の仕事関数に対応する光電子放出のしきい値は4.59eVであった。一方、TER Oを与えると仕事関数は高エネルギー側に増加したが、AとB点では異なる変化を示した。光電子放出のしきい値はそれぞれ、A点では4.63eV、B点では4.72eVとなった。TER Oによって誘起された格子変位分布において、B点のような格子変位が大きなサイトでは顕著な仕事関数の増加がもたらされることから、この局所サイトが触媒活性や反応選択性の著しい変化を引き起こすものと考察した。
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