研究概要 |
平成16年度の研究計画に従い、室温においてDihexadecyl Hydrogen Phosphate (DHP, (C_<16>H_<33>O)_2POOH)単分子膜を水面上に展開し、これに水平型QCM及びQCI測定装置の検出部(固有振動数:6MHz,感度:±0.5Hz及び±0.05Ω)を接触させた後、種々のアルコール(エタノール、1-プロパノール)を水相中に添加し、添加前後における周波数及び抵抗値の経時変化を観測した。その結果、どちらのアルコールにおいても、QCMでは周波数の減少(step1)とこれに続く増加(step2)を、QCIでは抵抗値の増加(step3)とこれに続く減少(step4)を観測した。Step1と2(QCM)については添加アルコールの鎖長依存性が見られたが、step3と4(QCI)については見られなかった。これから、step1と3はアルコール水和物の吸着(質量の増加)とこれに伴う界面構造水の流動化→DHP膜粘性の増加によるもの、またstep2と4は吸着アルコールのDHP膜内への浸透(膜粘性の減少)によるものと考えられる。これに続いて、添加エタノールの濃度依存測定を行った結果、特異濃度(50mM)を境にQCM及びQCIともに、後半のstep2(QCM)と4(QCI)の経時変化が消失した。これから、エタノールの濃度増加に伴う吸着エタノール水和物間の相互作用により、水和を伴うエタノール分子の準吸着層がDHP膜/水界面に形成されたものと考えられる。以上の結果から我々は、生体膜/水界面に麻酔分子が吸着後、麻酔分子の準吸着層が形成されることによる界面構造水の流動化→生体膜の安定化が麻酔の発現機構であるとする「生体膜安定化モデル」を提案した。これについて、国際麻酔学会(H17年2月開催)にて発表を行うとともに、現在論文を投稿中である。
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