研究概要 |
本研究では,温度変化こよって生じるベシクルの可逆的な分散・凝集を実現し、その機構を解明明らかにすることを目的とする。更に,このベシクルの可逆分散・凝集を利用して,水微溶性物質物質を水中から除去する手法を新規に確立することを目標とする。現在,社会問題となっている内分泌撹乱物質の多くが芳香族化合物であることを考慮して,水微溶性物質としては,ベンゼン,フェノールなどの芳香族油を用いる。本年度は、弱塩基性の界面活性剤である長鎖アルキルジメチルアミンオキシド半塩酸塩(CnDMAO)/2-ナフタレンスルホン酸ナトリウム(NaPhS)混合系において形成するベシクルが、温度変化によって分散凝集することを見いだし、その分散凝集の機構を明らかにすることができた。 【1】温度変化によるベシクルの分散凝集の実現 CnDMAOの炭化水素鎖長が12、14、16のいずれの場合も、25度ではCnDMAOとNaPhSの混合モル比X(=NaPhS/CnDMAO)が0.5付近で、ベシクルの沈降物が形成されることがわかった。この沈降したベシクルは50度以上では分散することが見いだされ、分散ベシクルは90度においても、安定に存在していた。沈降ベシクルは水難溶物質であるSudanIIIを可溶化することが確認されたことから、ベシクルを用いた水溶液中の水微溶性物質の除去へと展開が可能であると思われる。 【2】温度変化によるベシクルの分散凝集の機構 温度上昇によりベシクルの分散・凝集が生じる温度域で、ベシクルのゼータ電位が上昇していることが見いだされた。これは、カチオン性ベシクルの表面に結合していたナフタレンスルホン酸アニオンが温度上昇により解離することによってベシクル間の静電斥力が増大していることを示す。高温でのベシクル分散の駆動力は、温度上昇に伴うベシクル間の静電斥力の増大に起因すると考えることができる。ベシクルの分散挙動はDLVO理論により定量的に説明ができたことから、ベシクル凝集の主要な駆動力は、ベシクル膜間のファンデルワールス力であることが示された。
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