極性官能基に由来する分子間相互作用の制御は、機能性分子集合体の構築において重要な要因である。我々はレゾルシナレン骨格に柔軟なアルキル(ヘキシル)鎖を有する尿素誘導体を8つ導入したマクロ環型オクタ尿素がクロロホルムなどの非極性有機溶媒中において自己会合体を形成することを見出している。そこで、導入した尿素残基が形成する分子内および分子間水素結合の形成が重要であるとの考えられることから、以下の研究計画1)に従っで研究を実施した。 1)モジュール法により多様な類似化合物群を合成し、逆ベシクルなどの自己組織体の構築に適する分子設計指針を確立する。 まずは、レゾルシナレン骨格に導入する尿素誘導体の種類を変えたマクロ環型オクタ尿素を分子設計し、合成した。具体的には、アダマンチル、メチルベンジルなどを有する尿素誘導体を合成した。これまでのところ新たに得られたマクロ環型オクタ尿素は有機溶媒中で会合体を形成する実験データは得られていない。従来のヘキシル尿素型のマクロ環型オクタ尿素では分子間水素結合によって会合体の形成が有利であったのに対して、今回合成したアダマンチル、メチルベンジルなどを有するマクロ環型オクタ尿素では側鎖の嵩高さのために、分子内水素結合の形成が抑制されたものと考えられる。結果として、分子内水素結合により8つの側鎖が寄り集まったマクロ環化合物を得ることができた。とりわけ、光学活性なメチルベンジルを有する尿素誘導体は側鎖がねじれたキラルな分子内ナノ空間を与えることが期待されることから、マクロ環型オクタ尿素のキラリティーに基づく機能性の開発についても検討を行う必要があると考えられる。
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