生体内で鉄イオンをフェリハイドライト形態で貯蔵する機能をもつフェリチンを、アミノ基を末端に有するチオール単分子膜で修飾した金基板(単結晶電極もしくは天然マイカ上に蒸着した金フィルム電極)上に単分子レベルで修飾した。フェリチンが単分子レベルで修飾されたことを、原子間力顕微鏡(AFM)、電気化学法および水晶振動子を用いたマイクロバランス法で確認した。フェリチンが単分子レベルで修飾された金基板を大気下、400℃で1時間熱処理を行うたところ、フェリチンのタンパク質およびチオール分子が除去され、フェリチンコア由来の酸化鉄ナノ粒子のみが、基板上のフェリチンが固定化されていた位置に残されていることがAFM観察、赤外反射分光測定およびXPS測定により確認された。この熱処理を施した基板を石英チャンバー内に入れ、メタンと水素の混合ガス中で600℃に加熱したところ、フェリチンコア由来の鉄ナノ微粒子を触媒として、カーボンナノチューブが生成したことがAFM観察およびラマン分光測定からわかった。生成したカーボンナノチューブの直径は、鉄ナノ粒子の直径の大きさを反映することもわかった。このことは、フェリチンのコア鉄の直径を制御することで、カーボンナノチューブの直径をコントロール可能であることを示す。また、(111)結晶面をもつ金基板を用いたところ、カーボンナノチューブの成長方向は、(111)の結晶面を反映して成長することがわかった。これは、カーボンナノチューブの成長方向の制御の可能性を示しており、カーボンナノチューブを用いたナノ回路作製のヒントになると考えられる。
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