Self-assembly (SA)法は、カチオン性とアニオン性分子の各希薄溶液に基板を浸漬し、分子間の静電的相互作用により、自発的に基板に分子を吸着させ、分子レベルで組織化された多層薄膜を構築する手法として知られている。本研究では、このSA法を用いて、ナノオーダーで構造制御された機能性薄膜の構築を行った。本年度は、特に以下の2点に着目した。 1.固相重合を用いたポリジアセチレン超薄膜の作製 ジアセチレン基を有する化合物は、γ線や紫外線照射により固相で重合し、優れた電気・光学特性を有するポリジアセチレン化合物を形成することが知られている。本研究では、縮合剤を用いたSA法により、機能性分子を共有結合させながら積層することで、ジアセチレン基を有する薄膜を作製した。ジアセチレン基を有するジカルボン酸、アルキル系ジアミン誘導体、縮合剤を用いてSA膜を作製した結果、縮合剤を用いることで、各成分が積層ごとに縮合した安定な薄膜が100層まで作製できることが明らかとなった。γ線を用いた固相重合により、SA膜は固相重合が可能であり、有効共役長21ユニットのポリジアセチレン薄膜が得られることがわかった。また、偏光測定より、ポリジアセチレンのπ共役系が基板に対して平行に配向していることが示唆された。縮合剤を用いないSA法で作製した薄膜では、重合性が観察されなかったことから、縮合剤を用いたSA法の特異性が明らかとなった。 2.アニオン性側鎖を有する高分子の合成 アニオン性であるスルホン酸基を側鎖に有するポリチオフェンP-SMTEを合成した。P-SMTEは水に可溶であり、自己ドーピング機能を示すことが明らかとなった。さらに、P-SMTEを用いたSA膜の作製を検討した。
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