研究概要 |
本年度の主要成果を以下に記す. 1.空孔がハニカム状に配列した構造の有機薄膜(以下「ハニカムフィルム」)の空孔にナノ粒子を導入した構造体(ハニカムフィルム・ナノ粒子複合化構造体,以下「複合化構造体」)の大面積作製法を検討した.従来のハニカムフィルムにナノ粒子の水分散液をキャストする手法は簡便であるものの,大面積かつ少ないエラーの複合化構造体作製は困難であった.今回は2次元コロイド結晶を作製する手法を応用した.粒子濃度等の作製条件を検討することで再現性良く複合化構造体を得た.同時に,ハニカム空孔内に粒子の集積構造が自発的に作製され,各細孔内へ導入される粒子数のばらつきを小さくできた。現在,粒子の粒径およびその分散性・ゼータ電位・ハニカム空孔の大きさ,これらを制御することで細孔内に様々なパターン構造を作製できると予想している.本成果は複合化構造体のフォトニック結晶への応用に繋がるものであることから,今後種々の材料による構造体作製を検討する方針である.なお本件に関しては今後特許申請を予定している. 2.ユウロピウムまたはテルビウムを含有した発光性ナノ粒子をハニカムの各空孔に導入した複合化構造体の応用の第1段階として,ナノ粒子を導入した細孔のユウロピウムとテルビウムの発光強度比に基づくアドレッシングの高精度化を現在検討中である.これを実現することで,光記憶材料を創出できると期待している.なお昨年の予備的な実験結果の論文は本年度受理された.数値シミュレーション計算と細孔の発光スペクトル測定実験の統計的結果を比較したところ,組孔内のナノ粒子数の分散を小さくすること,及び発光強度を正確に測定できる系の構築,これらがアドレッシングの高精度化には必要であることが示唆された.今後複合化構造体の作製条件をさらに検討する予定である.
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