ビニルウラシル(VU)の反応性をさらに改良した5カルボキシビニルウラシル(CVU)を用いることで、DNAナノアーキテクチャー創製に向けた非天然核酸構造骨格としての枝分かれ核酸・末端がキャップされた核酸・環状核酸等、最もよく用いられるリガーゼでは合成が不可能であった様々な構造を有する核酸の調整を光連結によって成功した。 -枝分かれ核酸-枝分かれ核酸は、通常の核酸の持つ情報にさらに人為的に情報を付け加えた構造を有しており、あたかも荷札をつけた核酸になぞらえることもできる。最近、枝分かれ核酸は信号の増幅・3本鎖核酸の安定化・ナノ構造の構築等に有用であることも報告されている。そういった枝分かれ核酸は今まではあらかじめ枝分かれ構造を持つモノマーを用いてDNA合成機上で合成していたが、可逆的光連結法を用いることによりピンポイントで枝分かれ構造が可逆的にポスト合成法で容易に作り出すことができることを見いだした。 -末端が架橋された核酸-末端がキャップされた核酸は、キャップされていない核酸と比較して異常な熱安定性を有しており、細胞内で核酸を分解する酵素に対して耐性を獲得している。通常の2本鎖DNAが30分で分解されるのに対し12時間後も殆ど分解されないことを確認した。生体内でのヌクレアーゼ耐性を持つことから、核酸医薬のデコイとしての応用が可能であると考えられる。 -環状核酸-環状核酸はターゲットとなる遺伝子上でカテナン構造を作る事ができる為、対象遺伝子を完全にロックできる遺伝子発現抑制系と考えられる。幾何的にほどけない構造を持っていることや可逆性を有することなど、通常の遺伝子発現抑制システムにない利点を有する。 以上の様にこの酵素を使わずに光を用いた核酸連結反応を用いることで、非常にユニークな構造を有する非天然核酸構造を簡単に調整することが可能になった。これらは今までにないDNAナノアーキテクチャー創製に向けて重要な操作法と考えられる。
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