"細胞膜内における遺伝子検出・診断"を可能にするプローブとして、申請者は標的核酸をアロステリックエフェクターとする自己切断核酸配列(TASC)を提案してきた。まず、コンセプトとの実証に向けて、大腸菌rRNA-12MG1655 strainの16srRNAを標的としたTASCシステムをデザインし、in vitro系における遺伝子検出実験を行った。具体的には、5末端をフルオレセインでラベル化したTASCプローブを設計、合成し、16srRNA存在下における自己切断速度を求めた。その結果、従来のプローブデザインでは、標的非存在下においても、ある程度の自己切断が起こっており、細胞膜内における増幅型遺伝子検出に大きく影響を及ぼすことが予想された。そこで、標的核酸存在下における自己切断速度を軽減するため、TASCシステム中にヘアピンロック構造を形成する核酸配列を導入したLocked TASCプローブを新たにデザインし、この問題を克服した。実際にLocked-TASCシステムを合成し、その活性を測定したところ、およそ、20倍程度のON/OFF効率の上昇が見受けられた。 そこで、この改良型TASCプローブに5末端蛍光分子、鎖内消光分子(ダブシル)を導入したFRET型のLocked TASCプローブを設計・合成した。本プローブを用いた細胞外での確認実験のあと、パラホルムアルデヒドで固定化した大腸菌を用いた細胞膜内遺伝子検出実験を行った。その結果、細胞膜内における遺伝子検出、ならびに、細胞膜内におけるシグナルの等温増幅が確認された。
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