研究概要 |
近年,ペプチドセグメントを縮合することによる種々の長鎖ペプチド合成法が報告されている.本研究では取扱いの難しい難溶性膜貫通型蛋白質の合成を目的とする新規なペプチドライゲーション法の開発を目的としている. 今年度はまず,光反応により除去できる拡張型ネイティブケミカルライゲーションのための補助基の開発を行った.ペプチドセグメントを縮合することによる長鎖ペプチド合成法の1つであるネイティブケミカルライゲーション法では縮合部位にシステイン残基を必要とする.これを克服するために酸処理により除去できるライゲーション補助基を開発し,拡張型ケミカルライゲーション法を開発している.今回はさらに柔軟性を持たせるため,光反応により除去可能な補助基の開発を行った.補助基ユニットの合成法としてアミノ酸誘導体を経由する方法とより簡便な短段階の方法の2種類のルートを示した.この補助基を用いてモデルペプチド鎖の縮合に成功し,光を照射することによりこの補助基を除去し,長鎖ペプチドの合成を行うことができた. また,C-末端ペプチドチオエステル等価体リンカーの開発を行った.現在のペプチド合成はFmoc固相法が主流となっていが,チオエステルはFmoc基除去剤のピペリジンにより分解することからこの方法は適用できない.今回は光照射により活性化できるリンカーを用いて,ペプチドチオエステルの合成を試みた.すなわち,当該リンカーを導入したポリスチレン樹脂上で,Fmoc法によりペプチド鎖を伸張し,酸処理によりペプチド誘導体を得た.その後,チオール存在下で光を照射することにより,ペプチドチオエステルを得ることができた.しかし,現在のところ収率は低く,改善を必要とする. 今後これらの成果は膜蛋白質合成に適用されるものと期待される.
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