本研究では、アミノ酸残基を含む脂質がスペーサーを介して二分子連結された特徴的なジェミニ型構造を有する人工脂質を用いて、多細胞膜モデルなどの多彩な人工細胞膜モルフォロジーの制御を行うことを目的として研究を推進し、今年度は以下の研究成果を得た。 基板上へのベシクルの集積 溶液中において、ジェミニ型脂質を含む脂質二分子膜ベシクルの集積挙動を、ジェミニ型脂質のイオン認識挙動により制御できることを見出してきた。この系を基板上に展開し、詳細な検討を行った。具体的には、交互積層法により作製した高分子電解質膜上にジェミニ型脂質を含む平面二分子膜を作製し、この膜上に金属イオン添加をトリガーとしてベシクルを集積した。水晶発振子法および蛍光ラベルしたベシクルが集積した基板の蛍光測定および蛍光顕微鏡観察から、外部刺激をトリガーとして、ベシクルが基板に集積されていることが示された。 様々な外部刺激をトリガーとする基板上へのベシクル集積の制御 これまでに、様々なジェミニ型脂質を用いることで、異種の金属イオン(銅イオン、カルシウムイオンなど)をトリガーとして溶液中および基板上へのベシクルの集積挙動を制御できることを見出してきた。そこでこの系を用い、異なる種類のイオン認識能を持つジェミニ型脂質を含むベシクルを数種類混合した溶液から、あるイオン種を添加することで、選択的に目的とするベシクルを基板上に集積できる系を構築できることを見出した。 脂質膜の相転移がベシクル集積に与える効果 脂質集合体としてのベシクルは特徴的な相転移挙動を示すことが知られている。この相転移挙動を利用することで、ジェミニ型脂質へのイオン認識挙動を制御した。さらにこの挙動を利用し、温度によるベシクル集積挙動を制御できることを見出した。
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