3'-末端に自己相補性の一本鎖を有する三叉路DNAを形成するように設計された三本のオリゴデオキシリボヌクレオチド(ODN)を等モルで全ODN濃度が1μMとなるように、0.5MNaCl水溶液中に混合し、一且70℃まで昇温後、10℃まで自然冷却することにより、DNAナノケージを構築した。この溶液を、透過型電子顕微鏡(TEM)および動的光散乱(DLS)測定することにより、約50nmの球状の集合体が形成していることを確認した。これをT7 DNAリガーゼで連結反応し、Mung BeanヌクレアーゼおよびExonuclease IIIで切断実験を行ったところ、通常の一本鎖および二本鎖末端が切断される条件において、このDNAナノケージは全く切断されないことが明らかとなった。すなわち、一本鎖および二本鎖末端をもたない閉じた球状構造であることが示唆された。 また、乾燥状態ではなく、水溶液中での形態観察を行うために、DNAナノケージを蛍光染色し、共焦点レーザー顕微鏡により観察した。その結果、このDNAナノケージは多層構造を形成しており、濃度に依存して数十ナノから数マイクロメートルの大きさにまで変化することが明らかとなった。さらに興味深いことに、このDNAナノケージにカチオン性界面活性剤を添加すると、中空構造に変化することも明らかとなった。 また、このDNAナノケージ存在下において塩化金酸の水素化ホウ素ナトリウムによる還元を行うことで、ナノケージ周辺に金微粒子が集積した特異なナノ構造を構築することに成功した。
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