研究課題
本研究では、センサー素子として応用可能な、金ナノ粒子を固定化した分子インプリント高分子(Au-MIP)を合成することを目的として研究を行った。初年度には、Au-MIPの合成を行い、これを分子センサーとして用いることにより、目視および分光光度計による生体分子の簡便な新規検出法の開発に成功した。今年度は、Au-MIPを表面プラズモン共鳴(SPR)計測装置のセンサーチップ構築に応用し、低分子化合物に対する高感度SPRセンサーの開発を行った。金ナノ粒子(粒径約5nm)、アクリル酸、N-イソプロピルアクリルアミド、ビスアクリルアミド、ジメチルスルポキシド、ドーパミン(テンプレート分子)、AIBNを混合し、表面をビニル基で修飾した金蒸着ガラス基板上に塗布した。60℃で加熱することによりAu-MIP固定化基板を得た。同基板をSPR計測装置の検出部に装着し、種々の濃度のドーパミンに対する応答を計測した。その結果、11-メルカプトウンデカン酸で修飾したセンサーチップでは応答が見られなかったのに対し、インプリント高分子ゲルで被覆したセンサーチップでは、共鳴角の減少が見られた(100μMに対して-0.58°)。さらにAu-MIPを固定化した場合では、その角度変化は-1.28°であり、金ナノ粒子とセンサー基板とのカップリングにより、高感度検出が可能であることが示唆された。以上のように、小分子の結合を、高分子ゲルの膨潤と金ナノ粒子の移動という現象に変換することにより、従来のSPRセンサーの問題点であった小分子に対する感度を劇的に向上させることに成功した。テンプレート分子を換えることにより様々なセンサーチップが構築できるので、本研究成果によって、SPRセンサーがさらに広範囲な分野で使用されるようになるものと考えられる。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
Analytical Chemistry 76
ページ: 1310
Journal of Chromatography, B 804
ページ: 223