ポリエチレングリコールモノメチルエーテルに対して過剰量のボラン・テトラヒドロフラン錯体を反応させ、ポリエチレンオキシド鎖を有するヒドロボランモノマーを合成したのち、THF溶液中トリエチレングリコールとの脱水素カップリング重合を行うことによって、側鎖にポリエチレンオキシド鎖を有する櫛形有機ホウ素高分子を61〜76%の収率で合成した。構造は^1H-、^<11>B-NMRスペクトルにより決定した。種々のリチウム塩の存在下で得られた高分子のイオン伝導度を交流インピーダンス法により測定した。側鎖にトリエチレンオキシド鎖を有する系では、ホウ素に対し80mol%のLiTFSIの存在下で50℃において6.19x10^<-6>S/cmのイオン伝導度を示し、LiBrやLiCF_3SO_3を添加した系よりも高い値であった。また、側鎖長を変化させたところ、より長いPEO側鎖を有する系において、高いイオン伝導度が観測された。この挙動は以前に報告されている櫛型ポリホスファゼンや櫛型ポリシロキサンの場合と異なっているが、本系においては側鎖の密度が低いことが一つの原因と考えられる。PEO550を側鎖に有する高分子は50℃において8.48x10^<-5>S/cmのイオン伝導度を示した。これらの値は、以前に報告した直鎖状有機ホウ素高分子の場合と比較して改善されている。また、櫛型有機ホウ素高分子に関してリチウムイオン輸率の測定を行なったところ、LiCF_3SO_3を用いた系において30℃において0.38と、直鎖状有機ホウ素高分子と比較して遜色のない値が得られている。
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