ユーロピウムイオン(III)(Eu(III))を含有した酸化物ガラスおよび一部をフッ化物や塩化物としたオキシハライドガラスを溶融急冷法によって作製した。これらのガラスでは3.5mol%のEu_2O_3(7mo1%のEuX_3(X=F、Cl))を添加したときに蛍光強度が最も強くなった。また、Eu(III)の^5D_0→^7F_1に従った燈色蛍光に比べ、^5D_0→^7F_2に従った赤色蛍光が強く、ガラスが赤色蛍光体に最適なホスト材料であることが分かった。ガラス修飾酸化物を同族の陽イオンで置換したガラスの場合、その陽イオンが軽元素になると、つまり、ホストガラスの塩基度(pO^<2->)が小さくなると赤色蛍光の強度が比例して強くなった。これから、70B_2O_3-30CaO-3.5Eu_2O_3または70B_2O_3-30Li2O-3.5Eu_2O_3ガラスにおいて高輝度の赤色蛍光が得られることを見出した。立命館大学のSR光を利用したX線吸収分光法によって(100-x)B_2O_3-xLi_2O-3.5Eu_2O_3ガラス中のEu(III)の局所構造を調査した結果、x=30のガラスでは、Eu(III)は酸素を7配位していた。70B_2O_3-30CaO-3.5Eu_2O_3ガラスのCaOをBi_2O_3で置換したガラスでは、高輝度の赤色蛍光が得られなかった。また、上述した2種のガラスのCaOおよびLi_2OをそれぞれCaF_2およびLiFで置換したオキシハライドガラスでは、フッ化物が多くなるほど、赤色蛍光の強度が増大する結果を得た。以上のことから、赤色蛍光が強いガラスでは、Eu(III)の酸素およびフッ素の多面体の対称性が低下し、Eu(III)に第2配位するホストガラスの陽イオンがEu(III)に第1配位している酸素およびフッ素イオンを引っ張ってEu(III)を分極させることを明らかにした。
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