カチオン性ポルフィリン類をゲスト分子、カチオン交換性無機層状化合物をホスト材料として、両者からなる無機有機複合体について検討した。両者からなる複合体においては、ポルフィリン分子は高密度に吸着しながら、全く会合を伴わないという興味深い挙動を示した。すなわち、複合体中のポルフィリン分子は、励起状態の励起寿命が失活を受けず、反応活性な状態を維持している。この様な特異な挙動は、ポルフィリン分子内でのカチオン電荷間距離と、層状化合物上における平均アニオン電荷間距離の一致が重要である事を見出し、"Size-Matching Rule"と名付けた。層状化合物上異なるポルフィリンを複合体中に混在させ、その光化学挙動について検討した。例えば、亜鉛を中心元素として有するポルフィリンをエネルギードナー、フリーベースポルフィリンをエネルギーアクセプターとして光誘起エネルギー移動反応について検討した。蛍光スペクトルの解析より、亜鉛ポルフィリンを励起しているにもかかわらず、フリーベースポルフィリンからの蛍光が観察された。励起一重項状態において効率的なエネルギー移動反応が進行している事が明らかとなった。原則的には、ポルフィリンの吸着密度を増加させるに従い、エネルギー移動効率は上昇した。また、幾つかのポルフィリンの組み合わせでエネルギー移動反応を検討し、最大60%程度のエネルギー移動効率を達成した。このような高効率なエネルギー移動反応は、会合を伴わないという複合体の特長に由来して実現できたものと考えられる。
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