マラカイトグリーンは紫外光照射によりプラスの電荷を生じるフォトクロミック化合物である。長い分子鎖を持つマラカイトグリーン誘導体は、光イオン化したマラカイトグリーン部位が親水基として長鎖アルキル基が疎水基として働き、光照射によって両親媒性が発現すると考えられる。本研究では、長鎖アルキル基を持つマラカイトグリーンによるミセル形成の光制御を目的とした。 長鎖アルキル基を持つマラカイトグリーン、Bis[4-(dimethylamino)phenyl][4-(hexadecyloxy)phenyl]methanenitrileの分子設計を行い、合成に成功した。 カチオン性界面活性剤である塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)と長鎖アルキル基を持つマラカイトグリーン混合したサンプルについて紫外光照射を行ったところ、pH4.0から5.0の条件では、光イオン化率が0.2から0.5程度となることが吸収スペクトルの結果より明らかとなった。さらに、ミセル形成に伴う脂溶性物質のミセル溶液への可溶化をプロトンNMRにて調べたところ、光異性化反応の促進に伴い脂溶性物質としてのベンゼンの溶解度が光照射により増加することが分かった。最も顕著な光制御はCTACが8mMの濃度で得られ、10^<-5>Mの長鎖アルキル基を持つマラカイトグリーンがベンゼンの溶解度を4.55g/Lから4.81g/Lへと増加させることが明らかとなった。長鎖アルキル基を持つマラカイトグリーンの濃度を考慮すると、顕著な脂溶性物質の取り込みの光制御が可能であることが示唆された。これらの結果より、長鎖アルキル基を持つマラカイトグリーンによる分子集合体の光制御を用い分離・抽出の光制御への展開が期待される。
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