研究概要 |
本研究では、次世代無機ELデバイス材料となる発光素子材料の探索を目的としている。昨年度までの研究で、逆スピネル構造を持つMgIn_2O_4に希土類イオンをドープすると強い電気化学発光を示すことを見出した。今年度は、このMgIn_2O_4のMgを一部Caと置換して、Mg_<1-x>Ca_xIn_2O_4固溶体を合成し、構造変化の電気化学発光へ与える影響を調べた。Ca濃度を変化させると、Mg_<1-x>Ca_xIn_2O_4のX線回折図形の反射のシフトが観測され、固溶体が形成されていることが明らかになった。希土類をドープしたMg_<1-x>Ca_xIn_2O_4は明るい電気化学発光を示し、Ca濃度25%時に、2倍以上電気化学発光効率が改善されることが明らかになった。電子導電性はCaの添加により、大きな減少は見られなかった。電気化学発光では、高エネルギーを持った電子が発光中心に衝突することにより発光中心の励起が行われるため、電子導電性は発光特性を得るためには重要な物性である。Mg_<1-x>Ca_xIn_2O_4では、電子導電パスを形成するインジウムのネットワークを切断することなく、母体の構造を変化させることが出来るため、発光効率が改善したものと思われる。 また、本材料のさらに広い範囲での応用を目指して、電子線励起発光(CL)を測定した。CLもELと同様、電子により発光中心を励起するため、蛍光体材料に電子導電性が求められる。Er,EuをドープしたMgIn_2O_4のCLを測定したところ、母体に由来すると思われるブロードな発光の他に、希土類由来の明るいシャープな発光が観測された。以上のことより、本材料がCL発光を利用した表示デバイスであるフィールドエミッションディスプレイ用の蛍光体として応用可能であることが明かになった。
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