研究概要 |
^6Liの中性子の吸収断面積が^7Liに比べて数桁高いことを利用して,中性子の透過像からリチウム同位体の濃度分布を調べ,拡散係数の測定に適用した.本研究では^7Liからなる角柱状のリチウムイオン伝導体La_<2/3-x>Li_<3x>TiO_3を合成し,その端面に^6LiNO_3を塗布してアニール後のNR像から拡散プロファイルを求めトレーサー拡散係数を測定した.アニール温度は200〜400℃とし,30分ごとに試料を電気炉から取り出しラジオグラフィー実験を行い,最終的にそれぞれ4時間までの拡散実験を行った.x=0.066の試料の拡散係数は0.166のものよりも高い値を示し,これはペロブスカイト型構造のAサイトに空孔が多く含まれている前者はAサイトが完全に埋まっている後者に比べて移動度が大きいというモデルと整合性を示した.また,得られた拡散係数D^*はNernst-Einsteinの関係を用いて電気伝導率から求めた値D_σより僅かに低い値を示した.Aサイトの副格子を単純立方で近似すると,Haven ratio(H_R=D^*/D_σ)の理想値は0.65で,両組成の試料で高温ほどこの値に近づく傾向を示した.また低温ではx=0.166の試料でより顕著にH_Rの値は低下した.これはx=0.166のようにAサイトが詰まっていると,電場勾配のない場合には空孔生成の活性化エネルギーを必要とするのに,電場勾配のある場合には可動リチウムイオンが格子間を通る導電パスを通ることができるものと考えた.また,最初から空孔の存在しているx=0.066のような組成では,この影響が少ないものと理解した. この結果は,固体イオニクス討論会,中性子ラジオグラフィ高度技術の開発と応用専門研究会で報告した.
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