本研究はイオン伝導体と絶縁体のナノスケールでの複合化により、高リチウムイオン導電率を有する固体電解質を開発することを目的としている。最終年度である本年度は、前年度の結果をさらに発展させるべく、絶縁体構造の違いによる導電率の上昇を試みた。 (1)ナノコンポジット固体電解質の合成 絶縁体としてシリカメゾ多孔体を用いた。シリカメゾ多孔体は界面活性剤ミセルをテンプレートに用い、種々の条件で合成を行い、異なる細孔構造(比表面積、細孔容積、細孔構造の対称性など)を有する多孔体を得た。得られたメゾ多孔体に溶融させたイオン伝導体を充填し、ナノコンポジット固体電解質を合成した。イオン伝導体として、ヨウ化リチウムを用いた。特性の評価には、幾何密度X線回折、窒素吸脱着等温線、示差走査熱量の各測定により行った。 (2)ナノコンポジット固体電解質のイオン導電率測定 上記(1)で作製したナノコンポジット固体電解質のイオン導電率を交流二端子法により求めた。導電率は、前駆体のシリカメゾ多孔体の細孔構造に依存した。立方晶構造の試料において、より高いイオン導電率が得られた。これはイオン伝導経路の形状がイオン導電率に影響するためと考えられる。また、比表面積が大きい試料ほど高いイオン導電率を示した。これは界面に補足されるリチウムイオンが多く、欠陥濃度が高いためであるためと考えられる。本研究を通して、コンポジット固体電解質における高イオン導電体の設計指針を次のように得た。 (a)イオン伝導経路の最適化。すなわち、絶縁体の細孔がイオン伝導方向に配向した構造、あるいは三次元網目状に相互貫通した構造が望ましい (b)リチウムイオンと絶縁体との相互作用がより強い系を得ることにより、欠陥濃度を上昇させることが可能となる。
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