研究概要 |
昨年までの研究において、イオン交換によってマンガンイオン(Mn^<2+>)を導入したゼオライト(Low silica X-zeolite, LSX)では、2〜300Kの温度領域で常磁性しか示さなかった。そこで、本年度は、イオンドープではなくバルクで磁気特性を示す材料を、ゼオライトに導入することにした。導入する材料として反強磁性から常磁性にネール点を有する二酸化マンガンを選択した。また、二酸化マンガンの反強磁性は、スピン磁性に由来している。これを導入するにあたり、ゼオライトでは細孔の大きさが小さく、1ユニットセル程度しか導入することができないため、数十Åの細孔径を有するメソ多孔体(MCM-41)を器として用いることにした。含浸法により硝酸マンガンを細孔内に導入し、383Kで焼成することで二酸化マンガンを調製した。X線回折測定により二酸化マンガンが存在存在することが確認されたた。窒素吸着測定から、比表面積および細孔容積が半減していることが確かめられたが、X線回折測定より骨格構造は保持していることが確認できたことから、二酸化マンガンが存在する細孔と空の細孔が混在していると考えられる。二酸化マンガンを導入したMCM-41をSQUIDを用いて2〜300Kの温度領域で磁化測定を行った。その結果、バルクでは、100Kで反強磁性-常磁性転移が見られるはずが、50Kで強磁性から常磁性への転移が観測された。二酸化マンガンは、らせん磁性を示し、らせんピッチはc軸方向に7ユニットセルの大きさを持つ。ユニットセルのc軸方向の大きさは2.5Åであるため、約30Åの細孔径をもつMCM-41の細孔内には約12個のユニットセルが導入されたことになる。そのことから、導入した二酸化マンガン粒子の両端のスピンの向きが完全に反転せずにほぼ同じ方向を向いたために強磁性を示したと考えられる。
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