本研究は表面ゾル-ゲル法とテンプレート合成法を組み合わせることにより、導電性金属酸化物のナノ薄膜により骨格形成された、規則多孔体を作成することを目的としている。そのためにはまず、ボイド・クラックの無い緻密な酸化物超薄膜を生成する方法を確立することが望ましい。そこで研究の第一段階として、表面ゾル-ゲル法およびスピンコーティング法により、シリコン基板上に酸化ハフニウム超薄膜を作成し、両者の微細構造を比較検討した。表面ゾル-ゲル法で得た膜は、ボイドや粒界のない、非常に緻密なアモルファス酸化物層であるのに対し、ゾル-ゲルスピンコーティング法により生成した薄膜は、アモルファス相ではあるが、多くの粒界・空孔を含んでいることを見出した。この結果は、表面ゾル-ゲル法では液相中平衡反応下で酸化物ゲルの析出が起こるため、均質なゲル薄膜が得られ、それにより金属-酸素架橋ネットワークが二次元的に発達した、緻密な酸化物薄膜を生成できることを意味している。これに基づき、研究の第二段階として、表面ゾル-ゲル法により導電性インジウム-スズ複合酸化物超薄膜からなる多孔質材料の形成を検討した。具体的には、ろ紙を基板としてインジウムおよびスズアルコキシドの混合前躯体による表面ゾル-ゲル法を行い、最後にセルロース繊維を燃焼除去した。その結果、厚さ20nm程のインジウム-スズ複合酸化物超薄膜がセルロースファイバーをテンプレートとして直径100nm、長さ数μmのチューブ状に成長し、更にそれが3次元的に絡み合って多孔質構造を形成していることが判明した。この多孔質構造体作成法は、従来のラテックス粒子等の自己組織化構造を利用する方法よりも安価であり、またその多孔体はナノチューブのネットワークにより高い電子伝導性を示すものと期待される。
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