本研究は表面ゾル-ゲル法とテンプレート合成法を組み合わせることにより、導電性金属酸化物のナノ構造体により骨格形成された、規則多孔体を作成することを目的としている。前年度までの研究において、我々はセルロース繊維(ろ紙).をテンプレートに用いて表面ゾル-ゲル法をおこなうことにより、壁厚:10-20nm、直径:100-300nm、長さ:2-15μmのチューブ状インジウム-スズ複合酸化物(ITO)が3次元的に絡み合った多孔質構造体を生成することに成功した。これらのITO多孔質構造体は、高い気孔率(>80vol%)であるにもかかわらず室温において高い導電率を示し、中でもインジウムとスズの元素比(In/Sn)が9/1のものは最も高い導電率、0.53Scm^<-1>を示した。In/Sn=9/1の試料に対し、空間充填率を用いて理論密度100%のときの見かけの伝導率を計算したところ、20Scm^<-1>となり、これはスパッタリング法で作成した厚さ20nmの高品質ITO薄膜の導電率とほぼ等しいことがわかった。本研究で作成したITO多孔質材料では、セルロース繊維におけるマクロスケールのネットワーク構造がそのままITOネットワークとして転写されている。従って、そのITOネットワーク構造が電子のパーコレーション経路を形成し、高い気候率にもかかわらず良い導電性を生み出すものと考えられる。これらのITO多孔質構造体は、その構造的・電気的特徴から、センサー、光電変換システムなど、様々な次世代デバイスへの応用が期待される。
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