イオン性液体は、不揮発性・高イオン伝導性を示すイオンのみから構成される等方性液体である。近年、イオン性液体を電解質として利用した新しい電気化学デバイスの開発が注目を集めている。本研究では、イオン性液体の構成部位となるイミダゾリウム塩などを化学修飾することにより、イオン性液体に液晶性と重合性を付与し、異方的イオン機能性を示す新しい高分子ナノ材料を開発することを目的とした。 アクリル重合基をもつ扇状構造のイミダゾリウムイオン性液体モノマーを合成した。液晶性発現には、イオン性部位(イミダゾリウム部位)と非イオン性部位(芳香族アルキル部位)の二成分ナノ相分離形成を活用した。この化合物は7〜100℃までヘキサゴナルカラムナー液晶性を示した。液晶状態においてせん断を印加することにより、カラム構造をせん断方向に均一ホモジニアス配向させることに成功した。このモノマーに光ラジカル開始剤としてアマトフェノン誘導体を添加し、紫外光照射することにより重合を行なった。その結果、モノマー状態におけるカラムの均一な配向秩序を維持した透明な自立性フィルムが得られた。走査型電子顕微鏡によりフィルム断面の観察を行なったところ、せん断方向に平行なナノ構造の形成が確認された。配向したカラムナーフィルムの異方的イオン伝導性を温度可変交流イシピーダンス法により測定した。カラム軸に平行な方向のイオン伝導度は垂直な方向のイオン伝導度よりも高く、100℃において140倍の異方性値を得た。これはカラムの軸に沿ってイミダゾリウムイオン性液体からなる一次元的なイオン伝導パスが形成されているためと考えられる。 今後、重合基としてトリメトキシシラン基をもつイオン性液体モノマーを合成し、液晶性有機/無機ハイブリッド高分子ナノ材料の開発を行ない、上記のフィルムとの物性比較を行なう予定である。
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