昨年度の本研究で微生物由来共重合ポリエステルのうち、3-ヒドロキシブタン酸と3-ヒドロキシペンタン酸の共重合体(PHB-HV)をHBと3-ヒドロキシプロピオン酸の共重合体(PHB-HP)とブレンドすると、ブレンド成分の化学組成や結晶化条件等により特異的な相構造変化をすることを明らかにした。これらの共重合体はどちらもHBユニットを持つため、結晶単位格子構造はよく似ているが、PHB-HVはアイソモルフィズム現象(HBとHVユニットが同一結晶格子内で共結晶化すること)を示すが、PHB-HPは示さないという大きな差異があり、これがブレンドの特異的な相構造変化に何らかの関係があると考えられた。そこで、本年度はこの相構造変化の系統的な理解と相構造-分解性の関係を明示を目的に、示差走査熱量(DSC)、広角X線回折、小角X線散乱、酵素分解速度などの各種解析を行った。この結果、PHB-HVが結晶化を誘導したときにはPHB-HV型の比較的厚いラメラ結晶が、PHB-HPが結晶化を誘導したときはPHB-HP型の薄いラメラ結晶が形成されること、特に後者ではPHB-HP型ラメラにHVユニットも含めてPHB-HV鎖も巻き込まれて共結晶すること、及び、酵素分解性もそれぞれの結晶型に対応して変化し、PHB-HP型のほうがPHB-HV型より速度が高くなることがわかった。この結果から、ブレンドにより分解速度制御が可能であることを明らかにした。
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