研究概要 |
コロイド粒子の水分散液をイオン交換樹脂等で脱塩すると粒子が結晶状に規則正しく配列しコロイド結晶が発現する。金属などに比較するとコロイド結晶の弾性率は極端に低いため、重力や電場などの外場に鋭敏に応答する。粒径110±4.5nmのシリカ粒子を超純水に分散させイオン交換樹脂(AG501-X8(D),Bio-Rad)で8年間以上徹底的に脱塩したものを原液とした。単一粒子を用いた場合や大小二種類の粒子を用いた場合等について系統的にレオロジー測定及び反射スペクトル測定を全く同時に行い、結晶構造と粘弾性との関連を調査した。 単一粒子系ではコロイド結晶、大小二種類の粒子を用いた場合はコロイド合金結晶(置換固溶体(SSS)構造)が発現した。これらのコロイド結晶に流動変形を与えると、歪み量が約1程度で降伏挙動を示した。結晶構造は降伏後に部分融解しながら変化し、単一粒子系では結晶最近接粒子間距離が減少、合金系では増加した。これらの現象は流動変形に伴う電気二重層のflame-like変形と結晶格子面での粒子のスライディングにより説明することが出来た。 一方、粒径50nm程度以下の小粒径のコロイド粒子水分散系では徹底的に脱塩を行ってもコロイド結晶を発現しなかった。粒子の激しいブラウン運動の為と考えられる。レオロジー測定により以下のことが明らかとなった。(1)脱塩により分散液の粘度が著しく上昇した。アインシュタインの粘度式から見積もられる値より数十倍から数千倍も高い値を示した。(2)塩添加により粘度が急激に減少した。(3)脱塩系では弾性率が歪みの角周波数に依存せずほぼ一定であり、弾性体としての性質を強く示した。一方塩を添加した系では角周波数の増加と共に弾性率が増加し、粘性体としての性質を強く示した。以上の結果は、脱塩により電気二重層が大きく拡大し、また塩を添加することにより電気二重層が縮小することで説明できた。
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