水などの極性溶媒中のコロイド粒子の周りには電気二重層が形成される。脱塩による電気二重層の拡大は(1)流動抵抗の増大、(2)コロイド粒子間の斥力により、粒子同士の会合・凝集が発生しない、(3)コロイド粒子が規則的に配列してコロイド結晶を形成する、など様々な興味深い現象を引き起こす。これまでの研究結果から、電気二重層はコロイド粒子の沈降挙動に非常に大きく影響を及ぼす傾向があることが分かっている。本申請研究では超脱塩系における粒子の沈降挙動について、透過光強度測定やレオロジー測定により総合的に調査した。 ベントナイト粒子を超純水に分散させ、イオン交換樹脂を用いて4年以上脱塩させた。ベントナイト水分散液の透過光強度の時間変化を測定した。その曲線の変曲点における接線の傾き(slope)を求めた。低塩濃度領域I([NaCl]≦1×10^<-4>M)の時、slope値はほぼ一定であった。高塩濃度領域II([NaCl]>1×10^<-4>M)の時、slope値は急激に大きくなるとともに、水相と沈降していく粒子群の界面を形成しながら沈降した。Slope値は、界面の明瞭さを表わす指標と考えることができた。コロイド粒子のブラウン運動の程度に関係していると考えられた。領域Iの時、塩を加えていくと粘度は減少した。一方領域IIでは塩添加により粘度は増加した。 粒子の分散や凝集状態を調べるために反射型光学顕微鏡で水中の粒子を観察した。領域Iでは粒子が個々に分散している様子が観察された。一方、領域IIの時、粒子が凝集し大きな固まりとなっている様子が観察された。 粒子の沈降に伴う透過光強度測定とレオロジー測定を総合的に行うことにより、脱塩レベルに依存してコロイド粒子の流動抵抗や粒子から成る構造体の形成の様子をモニタリング出来ることが明らかとなった。
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