研究概要 |
本年度は,正孔ドープ系高温超伝導体La_<2-x>Sr_xCuO_4(LSCO)の超伝導秩序変数の揺らぎを定量的に解析することを目指し,LSCO薄膜試料に対して超伝導転移温度近傍でマイクロ波複素電気伝導度の周波数依存性を広帯域周波数掃引法により詳細に測定した. 様々なキャリア注入量x(0.04〜0.32)の薄膜試料を用いて,45MHz〜15GHzまでの周波数領域で複素電気伝導度の周波数依存性を超伝導転移温度以上の温度領域で測定することに成功した.超伝導を示す組成領域(x=0.07〜0.24)の試料に対し,超伝導転移温度近傍で複素電気伝導度の実部と虚部の双方に顕著な周波数依存性を観測した.この周波数依存性から超伝導秩序変数の熱揺らぎを定量的に解析するために,各温度の複素電気伝導度の振幅と位相の周波数依存性が動的スケーリング則(σ(ω)=σ_0S(ω/ω0))を満たすかどうかを検証した.この検証は,測定から得られた複素電気伝導度の周波数依存性の定量性を直接吟味する役割も果たしており,定量的解析に耐え得る測定結果はまだ少ないことが判明した.しかしながら,反強磁性モット絶縁相とd波超伝導相の相境界近傍に位置するx=0.07の試料に対しては,定量的解析が可能な測定結果を得ることに成功し,(1)超伝導転移温度より高温側の熱揺らぎ領域は基本的に2次元として振舞っていること,(2)臨界指数νと動的臨界指数zの積は,秩序変数の振幅をガウス揺らぎで扱ったAslamazov-Larkinの理論値(νz=1)よりやや大きく(νz〜1.5),むしろ,秩序変数の位相の揺らぎが重要な2次元のKT転移の振舞いと定量的によく一致することが分かった. 磁場中測定に関しては現在準備中であり,今後,詳細に調べる予定である.
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