欠損性ウルツ鉱構造を有するγ-In_2Se_3は、禁制帯幅1.9eVの直接遷移型半導体であり、タンデム型太陽電池のトップセル用材料として適している。本研究では、In_2Se_3多結晶薄膜の構造制御を行い、評価を行った。また、In_2Se_3多結晶薄膜太陽電池の試作を目指して、p形層としてp-ZnTeを提案し、ZnTe多結晶薄膜の製膜条件の最適化、伝導度制御等を行った。 まず、フォトルミネッセンス(PL)法によりIn_2Se_3多結晶薄膜の光学的特性の評価を行った。基板温度500℃、VI/III比4で作製したα相をほとんど含まないγ-In_2Se_3多結晶薄膜の5.7KにおけるPLスペクトルを測定したところ、波長860nm付近および940nm付近をピークとするブロードな発光が観測された。これらの発光の起源を検討するために、測定温度依存性を検討した。860nm付近のピークの活性化エネルギーを見積もったところ、91.6meVとなった。また、940nm付近のピークについては2つの活性化エネルギーがあるとすると温度依存性がうまくフィッティングでき、活性化エネルギーを見積もったところ、5.31meV、35.0meVとなった。 また、真空蒸着法によりCuをドープしたZnTe多結晶薄膜の作製を試みた。900℃〜960℃でCuドーピングした膜の表面は平坦であるが、1000℃では表面が荒れてしまうことがわかった。Cuの加熱温度を1000℃まであげるとCuが過剰にドープされ、ZnTe以外の物質Cu_4Te_3、Cu_<1.50>Zn_<0.3>Te、Cu_2Teが形成されることがわかった。また、Cuの加熱温度を変化させることにより導電率を制御でき、960℃で約10^<-2>S/cmと低抵抗な薄膜が得られた。
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