恐らく励起子分子によるZnO量子井戸中の高密度光励起下でのルミネセンスとポンププローブ分光により非線形光学特性を調べた。励起子分子の輻射的再結合によるルミネセンスが、格子と整合したScAlMgO4基板上のレーザー分子線エピタキシ法によって育てられたZnO/ZnMgOという多重量子井戸の中で低温(5ケルビン)で観測された。局在励起子および励起子分子の再結合による励起子間散乱による発光成分は、光励起パワー密度に対する発光エネルギー位置および強度の依存性を検討することにより確認された。励起子分子生成の光励起しきい値は、励起子間散乱のしきい値より著しく低かった。多重量子井戸中における励起子分子の結合エネルギーは、量子閉じこめ効果によって増強されたと言うことが実験的に分かった。ナノ秒での非線形光学的ポンププローブ分光手法の使用によって、励起子分子の生成をZnO多重量子井戸の中で精力的に調査した。励起子状態の飽和により吸収がブリーチすること、また励起子から励起子分子への遷移に対応する誘導吸収がスペクトル中で観測された。これは自由励起子状態から自由励起子分子状態までの光学遷移が、誘導吸収プロセスに関係するからである。スペクトル形状の解析により、求められた励起子分子の結合エネルギーは、まさに井戸幅の単調に減少する関数である。2.5nm未満の幅を有する多重量子井戸については、励起子分子の結合エネルギーが25ミリ電子ボルト(室温の熱のエネルギーに匹敵する)より大きいことが分かった。量子構造を人工的にうまくデザインすることにより、励起子分子を光学利得のメカニズムとして採用した初めての半導体光デバイスが実用化できるかも知れない。
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