本研究は、2次元的に拡がった表面そのものを微結晶に対する応力場として捉え、基板応力をコントロールすることで応力フリーな微結晶を作成するための基板、また、ひずみを制御された微結晶を創製するための仮想基板の作成を目的としている。また、このように制御された構造の埋め込み量子ドットとしての機能評価をおこない、歪み量子ドットの材料設計へフィードバックをおこなうことを目標としている。 本年度は、薄いポーラスシリコン層の上にホモエピタキシャル成長後加熱処理した基板上への自己形成的なドットの成長のin-situ観察を試みた。基板の加熱処理の際に、ポーラス構造部分の再結晶化にともなう原子数の不足を補うため、表面には元の基板表面と比較し圧縮方向の応力が現れることが期待される。この表面上に、III-V族化合物のドット形成を試み、通常のシリコン基板上での成長との差異を走査トンネル顕微鏡により調べている。 本年度の研究補助金は、主要観測装置であるこの走査トンネル顕微鏡の制御システム、主にエレクトロニクスの更新に使用した。これは、積年の使用による劣化のためか十分な性能をひきだせず、観測に大きく支障をきたしていたため、これを再構築することが必要であると判断したためである。このような手段の再整備は、当初の計画とは性格を異にするものであり、研究の遅延にもつながるものであるが、これは目的達成に不可避のものと考えている。
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