本研究は、高分解能ラザフォード後方散乱分光法(高分解能RBS)と低速イオンビームエッチングを組み合わせて、表面下の埋もれた領域を高い深さ分解能で組成分析を行う手法を開発し、積層膜の分析に応用することを目的としている。今年度は、既存の5keVイオン銃を用いて、SiO_2/Si(001)試料表面を様々なイオン種、イオンのエネルギー、照射角度でエッチングを行い、イオン照射に伴う照射損傷や表面の荒れを高分解能RBSで評価した。 厚さ2.5または4.5nmのSiO_2を成長させたSi(001)ウェハーを試料として、0.5keV、1.0keVのAr、Xeイオンを表面から10〜15°で斜入射してエッチングを行った。それぞれの試料を高分解能RBSで分析した結果、照射損傷や残留イオン濃度の点から、0.5keVのXeイオンを表面から10°で照射したときが最も良好な結果(照射損傷、残留イオンともに少)が得られた。より低速のイオンを表面すれすれに入射することが、照射損傷等を軽減するのに有効であることが確かめられた。この成果を第16回イオンビーム分析に関する国際会議(アルバカーキー、アメリカ合衆国、平成15年6月29日-7月4日)にて発表した。 よりエッチングの影響を少なくするためには、より低速なイオンを表面すれすれに照射する必要があるが、既存のイオン銃ではエッチングに時間がかかりすぎたので、高出力の極低エネルギーイオン銃を新たに購入し、組み立てを進めている。また、イオン照射による表面の荒れを軽減するために、小型真空モーターを利用してイオンの照射の面内方位を連続的に変えられる試料ホルダーを設計、製作した。
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