本研究は、高分解能ラザフォード後方散乱分光法(高分解能RBS)と低速イオンビームエッチングを組み合わせて、表面下の埋もれた領域を高い深さ分解能で組成分析を行う手法を開発し、積層膜の分析に応用することを目的としている。 今年度は、新たに設置した減速型低速高出力イオン銃を使用して、Si(001)基板上に高誘電率(high-K)酸化膜であるHfO_2を成長させた試料にイオンビームエッチングを施すことにより、酸化膜/Si基板の界面の高分解能分析を行った。膜厚10nmのHfO_2を成長させた試料に0.5keVのXe^+イオンを試料表面の法線から測って75°で照射し、イオンビームエッチングを行ったところ、HfO_2膜厚が減少するとともに、HfO_2とSi基板の界面をより高分解能で観察できることが示された。その結果、イオンビームエッチングする前には確認できなかった界面SiO_2層がHfO_2とSi基板の界面に約0.5nmだけ存在していることが観察できるようになった。その原因として、イオンビームエッチングによってHfO_2の膜厚が小さくなるとともに、イオンがHfO_2膜を通り抜ける際のエネルギー損失のばらつき(エネルギーロスストラグリング)が小さくなる効果に加えて、イオンが膜中の原子で多重散乱されることによるイオンのエネルギーの広がりを低減させる効果が大きいことも分かった。また、イオンビームエッチングにより試料に与えられる損傷はHfO_2の膜厚が約3nm以上の範囲で実用上問題ない程度であることが分かった。以上の結果から、高分解能RBSとイオンビームエッチングを組み合わせた手法が、試料内部の分析に有効であることが示された。本研究の成果は、平成17年度に開催される第17回イオンビーム分析に関する国際会議(6月26日-7月1日、セヴィリア市、スペイン)で発表する予定である。
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