研究概要 |
本補助金で支援を受けた研究では、20世紀に開発されてきた半導体デバイスに現在注目を集めている有機デバイスを組み合わせることで21世紀を牽引する新デバイス構築することが最終目標である。そのためには,有機分子薄膜を半導体表面に原子レベルで制御よく構築する第一関門である。これを実現する方法として、表面水素の反応を制御することにより、半導体上に有機分子薄膜を形成することを提案した。なぜなら、半導体表面においても有機分子自体においても、水素が関与しない反応はないといっても過言ではないからである。それゆえ、第一に、表面水素の観察ができねばならない。そのために、長崎大学にて多重内部反射赤外分光法を用いたプラズマ中での半導体表面反応解析装置を立ち上げた。多重内部反射赤外分光法は表面水素の検出感度が高く、表面水素の挙動を調べるには最適である。 表面水素を自在に制御するために、まず、酸素プラズマ中での半導体表面での水素の挙動について調べた。酸素プラズマを水素終端されたSi(100)、(110)、(111)面に曝露し、その表面でのSi-H振動スペクトルを測定した。その結果、Si(111)面上のすべて水素が、短時間で酸素プラズマによって引き抜かれた。一方、Si(100),(110)面上の大部分の水素は引き抜かれるが、一部の水素は長時間酸素を曝露した後も残る。酸素プラズマ曝露により水素はサブサーフェス領域にマイグレーションし、この領域には酸素が入り込めないことによると考えられる。したがって、酸素プラズマによる水素の引き抜きはSi結晶の面方位に依存しないが、サブサーフェス領域へ水素がマイグレーションすることは面方位に依存して起こると考えられる。 今後はメタンプラズマを用いて、表面水素反応の制御による機能性有機分子薄膜形成を行う予定である。
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