本研究では、1テラバイトの記録容量と1ギガビット毎秒のデータ転送速度を可能にするホログラフィック光メモリシステムの構築に向けた基礎実験を行う。本年度は、反射型ホログラム記録の配置を用い、0.5mm厚のディスク状のフォトリフラクティブ結晶中に2値画像データの記録を行い、多重記録による記録容量の算出を行った。 提案した光暗号化反射型ホログラフィックメモリでは偏光を利用して信号光と参照光が同軸に進むため、ディスク型記録媒体に記録することができ、集積化が可能であるという特徴をもつ。その原理確認実験として、反射型シフト多重記録における回折効率から記録間隔の限界を求め、記憶容量の算出を行った。実験では、0.5mm厚の鉄イオンをドープしたニオブ酸リチウム結晶を用い、画像情報を載せた信号光と一様分布をもつ参照光を対向する配置で干渉させる。信号光・参照光は記録媒体の直前でレンズを通過することによって球面波となる。空間シフト多重化法では、信号光を空間的にずらして記録することで、参照球面波によるブラッグ選択性を利用する多重化法であり、読み出し時は参照光のスポットの位置をわずかに変化させることによって、シフトブラッグ選択性が一致するデータのみが大きな回折光強度となる。 構築した実験系での信号光、参照光の1/e^2幅はそれぞれ15.9μm、45.6μmであった。記録間隔を30μmとして、4つの信号光を記録し、分離して再生できることを確認した。この場合、隣り合う信号光どうしが空間的に重なりをもっているため、多重記録が実現されていることを確認した。記録間隔を30μmとして5インチディスクの記録媒体に対して多重記録を行うと、簡単な計算から1.74×10^7個の信号光を記録できることがわかる。以上の結果をまとめ、国際会議と学術論文誌に投稿する予定である。また、メモリ材料として有機フォトリフラクティブ材料の開発を行った。有機材料は、ホログラム記録に対して必要な機能を、導入する分子で選択することができ、高速記録、高回折効率が期待できる。実験で応答速度80ms、回折効率15%程度の高性能なフォトリフラクティブ材料を得た。
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