本研究では、微細円形回折格子プローブの開発を行い、テラヘルツ帯走査型近接場顕微分光システムの開発を目的としている。円形回折格子は、通常フレネルゾーンプレートとして振舞う。フレネルゾーンプレートの周期構造を微細化することによって、通常焦点距離は短くなる。周期構造の微細化進めると、極限的には焦点距離が0となり、円形回折格子の中心に近接場(エバネッセント波)が発生する。したがって、この近接場発生用円形回折格子プローブにテラヘルツ波を照射した状態で、測定対象をプローブに対して2次元的に走査することにより、テラヘルツイメージングを行うシステムの構築を行う。これによって、波長限界を超える走査型近接場イメージングシステムが可能と考えられる。今年度は、近接場システムの導入を行う前段階として、2対の軸外し放物面鏡によってテラヘルツ波の集光を行う、波長限界によって制限される空間分解能を有するテラヘルツ時間領域分光イメージングシステムを構築した。本システムでは、放物面鏡の開口数によって決まる回折限界の空間分解能でイメージングを行うことに成功している。また、近接場用円形回折プローブ設計への基礎として、シリコンを用いて焦点距離の異なるフレネルゾーンプレートの設計を行った。シリコンは通常、キャリア密度によって光学特性が異なるが、高抵抗シリコンはテラヘルツ帯で屈折率が一定であり、テラヘルツ帯の光学材料に適している。さらに、来年度フレネルレンズを作成した場合に、きちんと作成できているかどうかを検証するために、フレネルゾーンプレートの焦点距離が、テラヘルツ波の周波数に比例することを数値計算により確認した。
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