高い位置及びエネルギー分解能を有する高性能CdTe放射線検出器を開発することを目的として以下の検討を行った。 高エネルギー放射線用CdTe検出器においては、CdTe結晶の電子と正孔の移動度と寿命差に起因する検出感度の低下や、エネルギー分解能劣化が問題となっている。この問題を解決するため、新規の電極構造である微小収束型電極構造を持つ単一検出素子を検討した。この検出器では信号取出電極の周りにサブ電極を形成し、検出素子内の電界を制御できるようにした。その結果、検出器信号中の遅い正孔のトラップの影響が少なくなった。また、信号取出電極とサブ電極間にガードリングを形成し、表面漏れ電流防止の検討を行った。電極作成及び検出器作製プロセスの検討結果から、結晶表面状態が検出器漏れ電流に直接関係し、検出器特性に大きく影響することが分かった。さらに、漏れ電流を減少させるために、結晶表面を過酸化水素などで軽く酸化する事が望ましいことも分かった。 以上の電極作成プロセスの最適化及び電極のサイズ、電極間隔を検討した結果、従来素子の問題点であった検出器感度の低下や、エネルギー分解能劣化が改善できることが分かった。単一検出素子の作成及び評価について米国で開催されたII-VI族半導体の国際会議及び室温動作可能な放射線検出器ワークショップで報告し、その発表内容をPhysica Status Solidi (c)及びIEEE 2003 Conference Recordにて記載された。
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