研究概要 |
本研究では,1.外部磁場が血流中の赤血球の配向分布,レオロジー特性および凝集構造におよぼす影響を数理的に明らかにすること,2.血流中の赤血球の配向分布,レオロジー特性および凝集構造にたいして解析を行うための標準となる数理的モデルを構築すること,を目的としている.研究期間は三年間であり,初年である昨年度は,平均場近似を用いた,外部磁場をうける単純せん断流中の強磁性棒状粒子の力学的特性を解析する計算力学的アルゴリズムを赤血球の系に応用し,粒子の配向分布,粘度,凝集構造形成過程を調べた.しかし,この解析では,研究の第一段階であったために,1.赤血球は剛体ではなく変形する粒子であるということ,2.血液の流れは非ニュートン流体的であるということ,を考慮できていないという問題があった.そこで,本年度は,研究の第二段階として,1および2の問題の計算力学的取り扱い方法を探り,それらの因子が,赤血球の配向分布,粘度,凝集構造形成過程に及ぼす影響を明らかにすることを目的としていた.本研究遂行にあたっては,煩雑な多体系をとり扱うことになるので,高性能な数値計算機の導入や,シミュレーション時のデータ処理の工夫など研究環境の整備も行った.これにより,現象の本質を再現する数理モデルを構築するための数々の計算機実験を行うことが可能となった.その結果のひとつとして,モンテカルロ法を応用することにより,外部磁場をうける強磁性コロイド分散系における凝集構造についての知見も得られた.また,磁場を受ける血流中の赤血球の力学特性のシミュレーター開発にむけて,臨床的に知られている実験結果などの資料を収集し,本研究における解析結果との比較のためのあしがかりを得た.
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